世界の医療・福祉ロボ市場は12年に約5000億円で、20年までに3倍程度に増えるとされる。現在は世界で一兆円規模の産業用ロボと並ぶ規模になりそうだ。医療用では日本は出遅れたが、政府支援で巻き返しに動く。
たとえば、手術ロボでは新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)や東京大学、オリンパスで国産試作機を開発。手術ロボでは「日本は技術がありながら、リスクを恐れて後手を踏みダヴィンチに完敗した」(医療機器大手首脳)。ダヴィンチは世界で成功した唯一の手術ロボで、米医療機器ベンチャーのイントゥイティブ・サージカルが00年に実用化した。1台3億円と高額ながら世界で約3000台も売れ、日本でも東京医科大病院などで150台が使われる。3次元モニターを見ながら医師が手元のつまみをそうさすると、離れた場所のロボットのアームが2本のかんしを医師の手により自在に動かし、腫瘍などを正確に切り取る。
ダヴィンチ追撃
日本の試作機は冠動脈のバイパス手術で直径2ミリと細い血管をつなぐ操作も技術的に可能。NEDOの弓取修二統括研究員は「ダヴィンチと同等の動きができ、小型化も進んだ」と語る。
産業ロボ大手の川崎重工業と医療検査機器大手のシスメックスは昨年10月、国内大手で初の医療ロボット会社を共同出資で設立、手術用などを開発する。橋本康彦社長は「米国製より価格が半分以下の製品を早く実用化したい」と語る。
医療ロボは創薬や再生医療など研究用も有望だ。安川電機は来年から世界の製薬大手などに戦略機を販売する。2つのアームが器用に動く「双腕型ロボ」だ。液晶画面上の操作で微量な薬品の調合なども人より正確にできるなど様々な作業が可能になる。価格は一台一億円だ。
安川電機の産業用ロボの売上げ高は1200億円程度・前川昭一ロボット事業企画部長は「産業用は中国企業の追い上げが激しい。豊富なノウハウを生かし、医療研究という新市場を先行して切り開きたい」と語る。
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