法人向け 脱デフレ、物流も
ヤマト運輸は法人顧客に対して一斉に運賃の値上げを要請する。インターネット通販など大口顧客には契約見直しを打診しはじめた。荷主の企業がコストを吸収できなければ、消費者が負担する送料が上がる。宅配市場の拡大にもかかわらず、競争が激しい法人向けの単価は下落が続いていた。業界最大手のヤマトが人件費や燃料費の高騰分を料金に反映することは日本経済の「脱デフレ」の流れを象徴する。
ヤマト運輸が全国の顧客に対して一斉に契約見直しを申し出るのははじめて。中小企業も含めてヤマトの取引先は100万社程度とみられ、すべてが見直しの対象になる。
これまでは荷主企業ごとに取引量に応じた割引などが多く行われていた。今後は荷物のサイズに応じた料金表を正確に反映した運賃を回収することで、実質的に値上げする。料金表そのものは変更しない。ヤマト側は「運賃の適正な収受」と説明している。
例えば東京_大阪間は料金表上は、段ボールの3辺の合計が60センチまでが840円。80センチまでが1050円。210円の差があるが、小さいサイズの運賃を基準にした取引が実態となっていた。
ヤマトを利用するネット通販最大手のアマゾンジャパン(東京・目黒)は受け入れ姿勢を示したとみられる。ギフト配送で利用する三越伊勢丹、高島屋など百貨店にも運賃を見直す意向を伝えた。値上げ幅は顧客ごとの取扱個数や契約によって異なる。少なくとも数%になる見込みで、1割を超えるような顧客には段階的値上げなど緩和策も提案する。
ヤマト運輸は2013年に低温輸送サービス「クール宅急便」で温度管理に不備が発生した。今回の値上げには、取り扱いが急増してもサービスの質を保てるように、施設や人員を拡充する狙いもある。
宅配市場は12年度の約35億個。ネット消費の拡大などで大幅に伸びているが、顧客獲得に向けた激しい値下げ競争が続いてきた。ヤマト運輸は宅急便の平均単価が02年度に710円だったが、13年度見通しは577円で約2割下落している。
業界では日本郵便が11年、佐川急便が12年にそれぞれ大口顧客への値上げに動いた。佐川急便は13年度上半期の平均単価が480円と、1年で約20円上昇した。
宅配便は大手3社のシェアが9割を超える寡占市場。ヤマトの要請で荷主企業の戦略に影響がでそうだ。ネット通販企業の間で「送料無料」サービスなどを見直す動きがでる可能性もある。トラック、鉄道、航空など国内の物量事業の市場規模は20兆円程度といわれ、うちトラック運送が約半分を占める。トラック運送は宅配便以外の企業間物流でも業者間の価格競争が続いてきたが、最近の燃料費高騰や需要の拡大で運賃引き上げ動きが出始めている。
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