企業あの手この手、医療費も削減
社員が健康になることで業績もアップする_。そうした健康づくりに乗り出す企業が増え、政府も後押しする方針を打ち出した。社員同士やライバル企業で競り合いながら、運動指導や栄養管理などの生活習慣病対策が進む時代が到来しそうだ。
健康器具メーカー「タニタ」(本社・東京都)は2009年、230万円かけて、全社員約250人に歩数計を配布した。毎月の歩数をランキングにして社内の壁に貼り出すと、社員同士が競い合って歩数を増やすようになった。効果は抜群で、体重が平均約3.6キロ減、体脂肪も同1.7%減った。同社広報室によると、「医療費まで2年で550万円も減らせた」という。
コンビニ大手の「ローソン」(同)は、健康診断で肥満や高血糖などメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)のリスクが高い社員をピックアップ。彼らを対象にした専用のアプリを作成し、その日にとった食事のカロリー量を携帯電話で簡単に確認できるようにした。
同社広報は「医療費削減の目標もあったが、社員の健康意識があがったのは確実。社員一人ひとりの仕事の効率も上がってきているのではないか」と期待を込める。
日産自動車(本社・横浜市)は、横浜市の夜景を見ながらランニングするイベントを開催。大手電気メーカー「パナソニック」(本社・大阪府)では、運動会のような「玉いれ」イベントを開き、健康づくりに乗り出す姿勢をアピールした。「社員同士のコミュニケーションが進み、笑顔が増えた」と語る。
こうした社員の健康づくりに熱心に取り組む企業を相手に、健康づくりの結果、社員が負担する将来の医療費がどのくらい増減するかを示すソフトを開発し、売り込む企業も登場した。
成長戦略を打ち出す政府も、社員の健康づくりを応援する方針。
今年6月までに、健康・医療戦略推進本部に設けた有識者会議「次世代ヘルスケア産業協議会」で、健康対策の効果をとらえるための指標作りに着手する。
具体的には、健康でメタボリックシンドロームと判定された社員の割合や、健診で再検査となった社員の割合などを指標とし、「見える化」を図る。健康づくり事業例もリスト化する。これにより、各社が競い合いながら、糖尿病や高血圧の早期発見や生活習慣病の予防を進めていくことを目指している。
社員の健康づくりのための事業、サービスの例
・歩数計の配布や体脂肪計の導入、歩数を競う行事の実施
・生活習慣病のリスクがある社員がエネルギー摂取量や運動量を把握できる携帯電話用のアプリを導入
・玉いれやウォーキングの行事を開催
・太りにくい食べ方の講座を開催。病気リスクが高い人に健康指導
・生活習慣による医療費、生命保険料の予測システムを提携先に提供
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