長崎と福島沖で実証機を運転
日本発の新しい洋上風力発電を開発しようという試みが本格化している。洋上に風車を浮かべる発電機の実証試験が長崎県や福島県で進んでいるほか、三菱工業も世界的な風力発電メーカー・ベスタス社(デンマーク)と提携し、世界最大級の風車開発を目指し始めた。
台風への耐久性も工夫
長崎県・五島列島の福江港から船に揺られること約20分。環境省が椛島沖1キロに完成させた出力2千キロワットの「浮体式洋上風力発電」の実証機が見えた。昨年10月28日に完成し、2015年度まで耐久性や環境への影響を調べる。
全長は霞ヶ関ビルの高さ(147メートル)を上回る172メートルにもなるが、海面から風車の先端までの高さは96メートル。残りの76メートルは水面下で浮いており、海底とはチェーンでつぃながれている。
推進が50メートル以上の海域では、改定に直接立てる「着床式」より浮体式の方がコストが低くできる。このため、今後の洋上風力の主力となると見られているが、世界的に見ても、浮体式洋上風力発電の技術開発はこれからだ。ここ数年でノルウェーとポルトガルにそれぞれ2千キロワット級の実証機がつくられた程度。環境省の事業は世界でも3番目の取り組みになる。
日本の洋上風力発電の導入可能量は大きい。水深50メートルで12億7千万キロワットにもなると推計されている。実現への期待がかかるが日本のような地域では、台風への耐久性も課題だ。
環境省の事業に参加している宇都宮智昭・京都大准教授(社会基盤工学)によると出力1000キロワット、全長約71メートルの小型機で実験中の一昨年の9月には、台風16号に襲われ、最大瞬間風速53メートル、高さ17メートルの波に見舞われたが、無事だった。
宇都宮さんは「50年に一度台風だったとされるが、設計上はこうした台風で壊れる確率を十分小さくしている。今回の実証機ではさらに強度を上げている。船でも衝突しない限り壊れることは考えにくい。データを積み重ねたい」という。
経済産業省も浮体式洋上浮力発電の実証研究事業を進めている。福島県沖約20キロの場所に設置した2千キロワットの実証機の運転を始めた。14~15年度には三菱重工製の7千キロワット2基の試験も始める。
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