こんにちは北区王子の税理士松村憲です。
日本産ブドウだけでつくるワインを首都圏各地の隠れた「名ワイナリー」が醸造し、人気を集めている。特産地の山梨県産には知名度で劣るが、どのワインも高品質で個性的な味わいだ。実りの秋を迎え、ブドウ収穫が盛んな栃木、埼玉、静岡のワイナリーからのレポートです。
高品質を貫く 栃木・足利
40度近い急斜面に広がるブドウ畑。2000年の九州・沖縄サミットの晩餐会でも登場した発砲ワインを醸造する栃木県足利市の有限会社「ココ・フアーム・ワイナリー」の原料畑だ。
同社は知的障碍者の自立を目指す施設「こころみ学園」の園生の保護者らの出資で、1980年に設立された。自社畑は約5ヘクタールで、年間生産量は15万本。年商は6億円ほどだ。
同社は89年からアメリカ人醸造技術者を招き入れ、品質を高めてきた。「福祉ワインはつくるな。かわいそうだと1回は売れても2回目から売れない」という学園創設者の信念からだ。
スタッフは24人。150人の園生も除草やブドウの袋かけ、醸造工程の一部を担う。池上知恵子専務は「世界には100年を越すワイナリーが幾らでもあり、私たちは駆け出し。園生と一緒に手間を惜しまず質を高めたい」と話す。
郷土愛し70年 埼玉・小鹿野
西武秩父駅から車で30分。畑と民家が続く道路脇にワインの醸造タンクが現れる。古い納屋のような建物が埼玉県小鹿野町の「秩父ワイン」。設立70年超の会社を社員10人が支える。
創業者は1889年生まれの浅見原作さん。1933年からブドウ栽培を始め、40年に醸造免許を取得。「ワインはブドウが命」という浅見さんの方針で、ブドウ畑に石灰岩の砕石を埋めるなど土壌改良に力を注いだ。59年にフランス人神父から「フランスの味」と称賛され、知る人ぞ知るワイナリーとなった。
浅見さんが95歳で亡くなると、親族が醸造を継承。1・5ヘクタールの自社畑を中心に年間10万本を生産する。浅見さんの名をつけた主力品「原作印ワイン」には昔ながらの一升瓶もある。
「秩父の土と人に70年も支えられてきたので、まずは地元提供を優先。そのうえで新しいファンも獲得したい」と、5代目の島田昇社長は郷土愛を貫く。
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