婚外子相続差別、最高裁が違憲判断へ
遺産分割の際、結婚していない男女から生まれた「婚外子」の相続分を、「婚内子」の半分とする民法の規定に対し、最高裁大法廷は、違憲判断を示した。規定を違憲とする初の司法判断を勝ち取った婚外子の女性は、その日を待ち続けてきた。
「生まれてきてごめんなさい」。東京都内に住むピアノ教師の女性(59)はそんな思いを抱いて生きてきた。結婚中に姉をもうけた母が離婚した後、妻子がある父との間に生まれた。母と姉との3人暮らし。「私たちお父さんがちがうんだからね」。姉は言った。父親の顔すら知らず、「私は望まれぬ子だった」と察するようになった。
自分が生まれた日、母は一晩泣き続け、父親の家の前に置いてくるよう親類から進められたという。その母が亡くなり、遺産分割に直面した時、初めて民法の相続規定を知った。
姉は、前夫との結婚中に生まれた婚内子だが、自分は婚外子。遺産の取り分は姉の半分だ。母とのつながりまで、姉の半分の価値といわれたようだった。
「一緒に育った姉妹なのに、法律が出生で差別した。あの時の悲しさと屈辱感は一生忘れない」
母の死去から9年後、父が亡くなり、再び相続に直面した。婚内子側が主張した女性の相続分は、法律上の「半分」を下回る「6分の1」。一人の人間として認めてほしく、同等の相続分を求めて提訴した。
この裁判で東京高裁は1993年6月、初めて相続規定を違憲とする判断を示した。
「まさに、親の因果が子に報い、式の仕打ちだ。近代法の原則に反し、見逃されてはならない」と指摘。双方が不服を唱えず、高裁決定は確定した。
だが、最高裁大法廷は95年、別の裁判で規定を合憲と判断した。規定の見直しは国会でも、保守系議員を中心に「不倫の子に同等の権利を認めるのはおかしい」との反対論が根強い。
女性は「妻以外との間で子をもうけた男性の代わりに、相続規定によって婚外子が罰をうけている」と考える。妻と婚内子側をなだめるために、婚外子のの取り分が半分にされた_。そんな思いが消えない。そして背景には「妻を含めた女性の経済的、社会的な立場の弱さがある」のだと。
違憲判決で、流れは確実に差別解消へと進むはず。どんな子であろうと、誕生を祝福される社会であってほしい。
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