こんにちは北区王子の税理士松村憲です。
今回も成年後見制度において不正をどう防ぐかについてです。
親族後見人が「自分の財産と被後見人の財産をきちんと分けて管理する意識がない」のも不正の大きな原因だ。「親の財産はいずれ相続で自分のものになるとして子供が使い込むケースが目立つ」(家裁関係者)
「後見人は被後見人の生活のために職務をはたすことが必要」(最高裁判所家庭局第一課長の馬渡直史氏)なのにその自覚に乏しい人が少なくないという。
親族後見人の不正は家裁への定期報告で見つかることが多い。家裁は制度の利用申立時に被後見人の財産や収支状況を提出させる。その後も後見人に被後見人の生活状態や財産、収支状況を通常1年ごとに報告させるが「収支差額と財産残高差額が一致しない場合や多額の支出に領収書の添付がない場合」〈家裁関係者)などに不正が疑われる。問題含みのケースでは親族後見人が定期報告をしないことが多く、そこからも不正が発覚する。
親族後見人の不正を防ぐにはどうすればいいのか。関係者の多くが指摘するのが「親族後見人の定期報告の強化」〈司法書士の大貫正男氏)だ。定期報告といっても数年ごとのケースもあり、1年ごとの報告を徹底する必要がありそうだ。
日弁連「高齢者・障害者の権利に関する委員会」副委員長も務める弁護士の滝沢香氏は「家裁も親族後見人の選任段階や選任後の相談などの体制、定期報告のチェック段階での監督体制を強化する必要がある」と語る。「裁判官、調査官、書記官などの人数が後見利用増加に追いつかない」(滝沢氏)現状があるものの監督強化は急務だ。
支援信託に期待
最高裁は「後見制度支援信託」に期待する。これは後見人が親族の場合で被後見人の当面使わない財産が一定金額以上ある場合などに、家裁がその財産を信託銀行に預けるよう支持する仕組み。介護施設への入所などまとまった資金が必要な場合、親族後見人はその都度家裁に引き出しを申請しなければならず、親族後見人の不正を防止する効果があるとされる。
最高裁は従来昨年2月以降の後見開始分に利用を限っていたが、今後は昨年2月より前に開始した親族後見人のケースでも利用を検討する方針で各地の家裁が弁護士会などと協議中だ。
ただ、日弁連は「被後見人にとっても自身の財産の利用が制限される可能性がある」などの問題点を指摘。
また実際に利用できるのは被後見人の財産が預金中心の場合などに限られる。
親族後見人が疑問や悩みをいつでも相談できる体制を整えるのも課題。「親族は単独で後見人になる場合が多く相談相手が身近にいない」ためだ。国などが体制作りに積極的にかかわることも必要。
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