高齢者の財産管理・生活支援
認知症などで判断能力が低下した高齢者らの財産を管理したり生活を支援したりする成年後見制度。認知症の親がいる親族には不可欠の仕組みだが、利用開始後に親族の後見人が被後見人の財産を使い込むなどの不正があとを絶たない。親族後見人のの不正はなぜ発生するのか、不正を防止するには何が必要かをまとめました。
「父が認知症でなかったら、お金を融通してくれたのに・・・」。東京都在住のAさん(54)は消えるような声で語る。
Aさんは認知症の父親(83)の成年後見人を3年前から務めていたが、最近家庭裁判所によって後見人を解任された。父親の財産の一部を自分が経営する会社の借入金返済や事業用資金に充ててしまい、家裁に「後見人にふさわしくない」と判断されたからだ。
ほとんどが親族
会社は父親が50年前に設立し5年前にAさんが経営を引き継いだ。父親が認知症になった3年前頃から業績不振に陥り、借入金が膨らんだ。悪いとは思ったが父親の財産に手を付けた。
成年後見制度の大きな柱である親族後見人の不正が目立つ。最高裁判所によると後見人の不正は2010年6月から12月末までで1058件、被害総額は約94億4000万円。ほとんどが親族後見人による。検察庁に業務上横領で逮捕・起訴されたり、懲役の判決がでたりしたケースもある。
親族後見人の不正件数は今後も増える可能性がある。成年後見利用者は昨年末で約13万6000人。対して認知症の高齢者は厚生労働省によると約460万人いる。成年後見利用者の増加は必至で不正も増えるとみられる。こうした中で関係者の間では「本格的な不正防止策が必要」との声が強まってきた。親族後見人はなぜ不正をするのだろう。日本弁護士連合会が親族後見人の不祥事事案について調べたところ、原因は後見人自身の「経済的困窮」が最も多い。
家裁が親族後見人を選ぶ場合は後見人自身の職業や収支、財産などもチェックする。経済的に余裕がない人を選ぶと被後見人の財産を流用する恐れがあるからだ。ただ就任時には問題はなくても「その後会社を解雇されるなど、生活が苦しくなる後見人は少なくない」〈成年後見センター・リーガルサポート専務理事で司法書士の矢頭範之氏)
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