放流稚魚14億匹どこへ
太平洋岸でサケの不漁が続く原因を探るため、国内漁獲量1位の北海道と2位の岩手県の研究機関が共同調査に乗り出した。両同県では漁獲量を増やそうと、毎年約14億匹の稚魚を放流しているが、生存率の低さが指摘されている。北海道沖で稚魚を捕獲するなどして放流後の生態データを蓄積、不漁対策に生かす考えだ。
サケの稚魚は毎春、北海道で10億匹、岩手県では約3~4億匹が河川に放流される。稚魚は海に下り、沿岸部で成長しながら北上。オホーツク海やベーリング海、アラスカ湾を回遊し、3~6年後に生まれた川に戻ってくる。
2012年度の漁獲量は、北海道の日本海沿岸では6万4583トン(02~11年度平均の91%)と平年並み。これに対し、太平洋岸は、北海道で4万2380トン(同47%)、岩手県で7558トン(同32%)と減少している。一匹当たりの平均体重も3キロを下回り、小型化も目立つ。
研究者は、太平洋を北上中に稚魚が減っている可能性を指摘。道県は、これまで続けてきた不漁対策シンポジウムなどにくわえ、共同調査でさらに踏み込んだ原因究明を行うことにした。
調査を行うのは、岩手県水産技術センター(岩手県釜石市)、水産総合研究センター北海道区水産研究所(札幌市)など。6月下旬から7月上旬に、漁業調査船「岩手丸」が襟裳岬沖や釧路川沖などに出向き、引き網や集魚灯で稚魚を捕獲し、餌のプランクトンの生息状況も確認する。
注目するのは、稚魚の内耳のある砂粒大の「耳石」だ。樹木の年輪のような模様があり、成長が早いと年輪の間隔が大きくなる。放流稚魚の一部には、耳石に出身孵化場などを示す印をつけており、耳石を解析すれば、放流から海に下るまでの日数や成長過程が分かるという。
岩手県水産技術センターの清水勇一・主任専門研究員は「サケの生態は分からないことだらけ。データを持ち寄り、稚魚の減少要因を探りたい」と話している。
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