こんにちは北区王子の税理士松村憲です
江戸時代にも、現代同様に、長い不況の時代がありました。そのような厳しい経営環境の中から、現代にも通じる商売の様々な工夫や商人道がうまれたようです。
家訓に残した永続繁栄のためのエッセンス
江戸時代は、物流の発達によって商業活動が盛んになり、庶民の生活が向上し、五代将軍綱吉の頃、元禄時代(1688~1703)は、消費経済が花開き、一種のバブル時代でした。
しかし、いつの時代も好景気は長くは続かないもので、その後は、江戸幕府の財政逼迫を受け、八代将軍吉宗の「享保の改革」などによる金融引き締めや経済収縮の政策が次々と打ち出され、不況が長期化し、実に商家の8割が倒産したといわれます。生き残った商人は、商売の厳しさを痛感し、家業が永続的に繁栄する経営管理や店主心得などを「家訓」として定めたとされます。
実際に、この時代につくられた家訓が多くあります。
例えば、三井財閥の始祖・三井高利は、経営の基本を記した遺訓を残し、その後、長男で二代目当主・高平は、高利の遺訓に、自分の商いの様々な苦労から学んだことを加えて「宗ちく遺書」としてまとめました。
この中には、自らを律すること、事業への専念などが記されています。
「三井家 宗ちく遺書 より」
~商売は決断力を最も必要とす。
たとえ一時の損失を忍んで見切るとも、後日に至ってより大なる損耗を醸すに勝る。
(意味)一般的な損失をおそれて見切りをつけないでいると、かえって後で大きな損害になってしまう。
その決断力こそ商売で最も大切なことである。
~奢りの気持ちがおきれば家業がおろそかになる。そんなことで商売が繁盛するはずがないではないか。
ただひたすら一家睦まじく、わが身の行いを慎み、私中心の考えを捨て、一族を慈しみ、家業を怠りなく務めること
が大切である。
そうすれば繁昌は子々孫々まで続いていくに違いない。
(意味)上に立つ者に奢りの心が生まれると、事業がおろそかになり、商売が繁昌しない。
自己中心の発想や行動を捨てて一族を慈しみ、本業に専念することが事業存続につながる。
~商人は商売に対する普段の心がけがうすく、油断をしていると、他より商売が奪われる。
これは戦いの原理である。
いつも心に緩みなく、家業に懸命になれば、家は栄えるものである。
(意味)商人が家業に専念することをわすれて、気のゆるみが生まれると、たちまちその地位をうばわれるのが、
商売の原理である。
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