こんにちは、北区、王子の税理士、松村です。
前半では、勤務態度に問題のある社員が解雇に至った経緯をお伝えしました。後半では、解雇後裁判に発展し、その裁判での判決についてお伝えします。
前半の事例のAの飲酒癖や一連の勤務態度からすると、「解雇に問題はない。Aの損害賠償請求は認められない」と考える人も多いのではないでしょうか。
しかし、実際の裁判(一審)では、「Aの行動には問題があり、解雇理由にはなるが、本件の解雇は社会通念上、相当として是認できないため違法である」として、Aの請求が一部認められる結果となりました。
一体、会社側にはどのような問題があったのでしょうか。
判決は、Aが飲酒を要因とするAの勤務態度によって職場環境等を乱したことは、解雇の理由にはなるけれど、「会社は、A自身に問題点を自覚させて勤務態度を改める機会を与えるべきであったにもかかわらず、それをしなかった」ことを問題としました。
改善の機会を与えるとは、具体的には、
飲酒癖、深酒によって勤務態度に問題があることを注意、指導する。
Aの行為が解雇理由になることをはっきりと警告する。
懲戒処分や降格など解雇以外の方法によって、勤務態度の改善が図れるかどうかを見極める。
以上のような指導を繰り返し行う。
つまり、会社は解雇する前に、注意や指導や警告を繰り返し行うとともに、懲戒処分や降格等により、社員が自ら改める機会を与え、その結果として、勤務態度が改善されるかどうかを見極める必要があるということです。
言い換えれば、会社は「社員自らが改善するようにもっと努力しなさい」ということです。会社にとっては、かなり厳しい考え方と思われますが、裁判では、会社が解雇を避けるために「どれだけ努力したかどうか」がかなり重要視されます。
このように、従業員の飲酒が問題であることを裁判所が認めているにもかかわらず、以上のような判決が出たことからも「安易な解雇を認めない」ということの意味がおわかりいただけると思います。
会社としては、勤務態度が著しく問題のある社員に対しては、改善の機会を与える目的で、
注意や指導を繰り返し行う。
注意や指導を行った日時とその内容を記録として残す。
問題があったときは、再発防止策を含む始末書(反省文)を提出させる。
等のような対応をとる必要があります。
実際に、勤務態度に問題があった社員を解雇して訴訟となった他の事例では、会社が以上のような対応を繰り返し行ったにもかかわらず、その後、改善がみられなかったためにやむなく解雇したということが認められたケースもあります。
実際の現場では、あくまで社員に良くなってもらうことを前提として注意・指導をしていきましょう。
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